SAS

SASユーザーに新機能が普及しないわけ

たまにはGTL以外の記事を投稿。

最近他社の統計担当者がannotationを使ったグラフ作成をどや顔で発表していて苦笑いしたことがありました。
sgplotやGTLが発表されてから10年経とうとしているのに、いまだに旧世代の技術を使っていることにびっくりですよ・・・

グラフに限らずSASユーザー総会でも発表されているものの、いまいち普及していない機能って結構あると思うんですよね。

ということでどうしてSASのアップデートが普及しないのかを改めて考えてみました。
*100%主観です!

保守的な環境

これは臨床開発特有だと思いますが、臨床統計は人の命にかかわることなのでデータ解析の効率よりも信頼性を特に重視します。
なので実績の多い手法を長年使い続けるケースが多く、新規の解析手法の導入はあまり積極的ではない印象があります。

製販後調査やDB調査といった介入がない調査だと傾向スコアのような流行りの方法を使うケースもありますが、基本的には古典統計学の範囲での解析がメインです。具体的には要約統計量の算出、仮説検定、線形混合モデルといった頻度論的な手法を主に使うことになります。使っている統計手法はおそらく10年前とほとんど変わっていないはず。

統計というすごい難しいことをこなしているように見えますが、実際のところ過去の案件のコードをコピペして作業している人も少なくありません。そりゃ昔から同じ方法で解析しているのだから、1からプログラムを書くよりも昔作製したプログラムをコピーしてきて修正したほうが早いし確実ですからね。いまだにannotation datasetやDDEといった古い技術が現役なのもこれが理由です。

過去の資産を効率よく流用するのが大事になってきますので、自分で文献を調べて考察までできる人なんて統計部門であってもちゃんとできる人はそんなに多くはないです。文献調べるよりも社内でわかる人を探してプログラムを提供してもらったほうが効率的です。

もちろん部署や会社によりますが、多分新規技術の情報収集を積極的にやっている人もそんなに多くはないでしょう。。

遅いアップデート

SAS自体のアップデートの遅さも原因の一つです。現在のSAS baseの最新バージョンは
SAS 9.4M6M7です。更新日は2018年11月2020年8月なので現時点では1年程度アップデートされていないことになります。それに対しRはおよそ1年に4,5回はアップデートされます。

そのためSASはRよりもバグが発見されても長期間放置される可能性が高いです。これ実績と信頼性を売りにするのなら結構危ないと思うんですけどね。
バグ報告してもすぐに対応はしてもらえません。

こんな有様ですからSASの最新情報を調べている人はユーザーであっても少数です。アップデート自体がレアイベントですから定期的にチェックする必要も乏しいですからね。

業務内容自体はもう成熟している

ずっと同じソフトを使ってずっと同じような解析業務をしており、業務内容自体はもう成熟しているといっても良いかもしれません。なので治験の臨床統計業務は今後大きく拡大することはないと思います。
今後治験方法が改良されるとしたら統計手法よりもデータを取得する段階、すなわちモニター職の業務範囲のほうでしょう。バーチャル治験なるものもあるようですし。

結局のところいくらデータをこねくり回したところで、低品質のデータでは大した結論は出せません。だから統計手法の改良よりもデータの取得方法の改良のほうがずっと効果が高いです。

若手の統計職の担当者は治験の臨床統計業務以外の武器を持たないと今後厳しくなるかもしれません。職がなくなることはないですが、手取りを上げることが難しくなると思います。

私がSASの勉強は最小限にしておき、別の技術習得にリソースを回すべきといっているのはこういう理由からです。習得するべきことがあるのだからSAS新機能の調査と習得に時間をかけるわけにはいきませんよ。

まとめ

SAS新機能が普及しないのは新機能を習得しなくても業務には支障がないうえに、SAS新機能よりも習得するべきことがあるから、という結論になると思います。
こればっかりはいくら広報活動したりブログ書いたりしても状況は変わらないでしょうね。